能登の未来

FUTURE

能登の未来のまちづくり - 非効率の中の豊かさ

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投稿者

登美真人

令和6年1月1日、能登を揺るがした地震は、珠洲市、輪島市、能登町、志賀町、七尾市に多大な被害をもたらしました。私の故郷、七尾市もその一つです。かつて笑顔で溢れていた我が家は、基礎の亀裂と傾きにより、別の場所のように変わり果てていました。

この地震により、多くの住民が金沢や野々市、東京へと移住し、かつて賑わいを見せた地域は静寂に包まれました。七尾市の出生率の低下が既に問題となっていた中、この出来事はさらに人口減少を加速させる一因となりました。

私は高校生の頃、都会の暮らしにあこがれ地元を離れ、東京の大学へ進学することを決意しました。初めての都会生活は、その人の多さ、システムの違いに圧倒されましたが、その効率性と便利さにすぐに慣れ、快適な生活を送りました。Suica一つで移動が可能で、電車も1時間も待つことはなく、頻繁に来ます。
しかし、その中にも息苦しさを感じることがありました。自転車を止める場所も限られており、自転車できたはいいが止められないこともしばしばありました。満員電車を避けるための時間調整など、都会特有のストレスがありました。

大学卒業後、石川県の教員採用試験に合格し、迷わず故郷に戻る決断をしました。帰郷して感じたのは、かつて不便だと感じていたことが、実は心地よいものだったということでした。自然豊かな環境、地域コミュニティの温かさ、そして何よりも、非効率的であることの豊かさを改めて実感しました。

能登の魅力は、効率性を追求する都会とは異なり、非効率的な暮らしの中にこそあると思います。例えば、雪かきは大変ですが、それを通じて地域の人々とのコミュニケーションが生まれ、一体感を育むことができます。民宿も、ビジネスホテルのような均一性はなく、それぞれに個性があり、地元の人々の暖かさを感じることができます。

能登の未来のまちづくりにおいては、このような「非効率の中の豊かさ」を大切にしていくことが重要だと考えます。だんだんと効率的になっていく流れにあらがう必要はありません。ただ、人が少ないからこそ、降水や降雪が多いからこそ際立つ自然の美しさや人と人とのつながりを大切にして、そして、都会との役割分担が明確になっている「まち」を思い描きながら自分のできることを一生懸命やっていこうと思っています。

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