能登の未来

FUTURE

山野草のような強さで

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投稿者

浜野みよ子

珠洲市で長年、山野草の店を営んできました。歳を取って店を閉めてからも、自宅で数百の鉢を育て続けています。私の人生はずっと、山野草と歩んできたようなものです。
 能登の豊かな自然は、たくさんの珍しい山野草を育んでくれます。半島の先端で人の手が入りにくい、だからこそ保たれているものがあります。エビネラン、カキラン、アカアシナルコユリ、ニッコウキスゲ、雪割草。山に入ると、小さな優しい花を咲かせる山野草に出会えますよ。場所は、ばあちゃんの秘密。
 お店を営んでいた時は、都会からもお客さんが来てくれました。決して派手でない、優しい花が好きな人はたくさんいます。農協や中学校で山野草を使った苔玉作りの講習もしましたよ。テレビや新聞で山野草の宣伝もしてもらいました。たくさんの人に能登の山野草を、知ってもらう役に立てたと自負しています。
 そういえば、まだお店を始めたばかりの頃、冬になってハッカクレンという山野草の鉢が、すっかり枯れてしまったことがありました。残念やな、捨てんとな、と放っておいたその鉢が、春になったら倍の株に増えて芽を出しました。一見枯れたようでも、土の中の根っこは、しっかりと生きていたんです。山野草は雪でも霜でも、嵐が来ても大丈夫。春が来ればまた、必ず芽を出す。控えめだけれど自然の厳しさを乗り越えて強く生きる、山野草と能登の人は、どこか似ていると感じます。この自然災害もきっと、乗り越えることができると信じています。
 百年後の能登にも、たくさんの山野草が残っていてほしいですね。そして小さな山野草の店を、孫やひ孫達が開いてくれていたら、ばあちゃんは嬉しいな。

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