能登の未来

FUTURE

珠洲に生きる

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投稿者

瓶子 明人

今回の地震があってから以前より珠洲が好きになったような気がする。避難所で寝泊りする母親、自宅の一角で寝泊りする父親、知人の家を間借りして仮住まいする私達。未だ家族会議も出来ていない。自分としてはやはりこの地で再建したい、しかし少しでも安全な地で新たな生活を求める家族。罹災証明書もまだ確定しない状況だが、壊れた店で営業を再開した。店を開けられたことは一歩前進出来たと思う。再開を待っていてくれたお客さんが沢山来店してくれ、これまでの苦労や心配事など沢山会話をかさねた。金沢からいつも来てくれる20代のお客さんが来てくれ、『無事でよかったです、これからもずっと通わせてもらいます。』と、なんと嬉しい声を掛けてくれるのかと心が温かくなった。そして先日、高校生の新規のお客さんが来店してくれた。話をしていると、なんとその子は珠洲で就職するというのだ。壊滅したこの珠洲を離れる選択をせず残る決断をした高校生。この決断には正直驚いた。心のどこかではここで生活基盤が創れるのか、珠洲にはもう居られないかもしれないと思っている自分がいるのも事実。『よく珠洲に残ってくれた』とか『一度は外を見てこい』とか無責任には言えないが、話をよく聞くとその子は『海』が好きで漁師になるとのこと。自分も海が大好きで釣りや魚の話で盛り上がった。お客さんと沢山話すことで珠洲の海や山、人柄とか全部が好きなんだなと改めて気づかされた気がする。帰り際、連れてきてもらった親御さんに『母さん、俺、今度からここ通うわ』と笑みを浮かべて嬉しい一言を言ってくれた。地震発災から2月足らず、ふたりの若者の発した言葉と行動は、私は何としてもこの地で再建を果たさなければと思わせてくれました。否、果たさなければではなく、再建をしたい!と思わせてくれたふたりには感謝の意を表したいくらいだ。100年後の珠洲と言われればなかなか難しいお題なのかもしれないが、珠洲の未来を選択した若者、私の子、未来の孫、曾孫が、街並は変わってもこれまで愛した珠洲を同じように愛してくれたらと願うばかりだ。

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