能登の未来
FUTURE
投稿者
余郷総子
私は輪島市出身で、朝市通りで輪島塗を営む家に生まれました。同じく朝市通りにある祖母の家は江戸時代から続く輪島塗の塗師屋(製造・販売店)でした。幼い頃、祖母と一緒に朝市に買い物に行って「それいくらけ(いくらですか)?」「これ5匹で1,000円やけど、1匹まけとくわ(おまけしとくよ)」「おおきに(ありがと)」と祖母と朝市おばちゃんとの掛け合い交渉をいつも間近で見ていました。また祖母の家には輪島塗の工房があり、職人さんが真剣な眼差しで、器形の木地に漆をへらで塗り付けているところ(下地塗り)、さらに工房2階に行くと幕で囲まれた場所で、光沢あるねっとりとした黒や朱の漆を器に塗り付ける上塗り作業を見入ることもありました。
輪島には日本を代表する朝市、世界に誇れる伝統工芸の輪島塗があります。石川県外の人と初対面で会った際、輪島市出身だと自己紹介すると「輪島の朝市行ったことあるよ!」「『輪島塗』!社会科の教科書に出てきたよ」とすぐ反応してくれて、自分の古里を誇らしく思える瞬間でした。そうでありながら、今の輪島では若い人がより住みやすい町を求めて、どんどん流失していて歯止めが効かない現状です。輪島と金沢圏との間の生活格差が大きくなっているのです。輪島での住みやすさを、金沢圏と出来るだけ近付けて欲しいというのが私の切なる願いです。本当は輪島に住み続けたいけれど、金沢圏に出ざるを得ないと思う人が多いのではないかと思っています。
●金沢まで1時間で行けるど太い高速道路を
どうしたらよいか。思い切って、車で2時間前後かかる輪島ー金沢間を1時間で行けるような、ど太い高速道路を一本造って欲しいと思います。そうすれば輪島は金沢の通勤圏に成り得ると思います。きっと金沢に移住せずとも輪島で生活し続けることが出来て、人口も著しく減ることはないでしょう。生活水準の格差が許容範囲ならば子育て世代は安心して輪島に住み続けることが出来ると思います。
●輪島市ふるさと納税に「医療体制の充実」の創設を
もう一つ私が気にしているのは医療水準の格差です。持続可能な生活基盤を構築するためには、生きていく上で必要な医療体制は必須です。私は以前病院の薬剤師をしていました。高齢者は脳梗塞(脳の血管に血栓が詰まり、詰まった先に酸素が行き渡らなくなり脳の一部が死んでしまう)のリスクが高いことが知られていますが、脳梗塞になると重い後遺症が残ることがあります。しかし症状が出始めてから4.5時間以内に脳の血栓を溶かす薬を投与すれば、重い後遺症を防ぐことが出来ます。しかし輪島にはその専門である脳神経内科医が現在居ないので、輪島ではその治療が出来ないようなのです。1秒でも早くその薬を投与すべきであるのに、市外の病院に救急搬送するしかなく、後遺症が残るリスクが高いのが心配です。是非ともこの治療を、高齢者が多い輪島で出来るようにして欲しいです。