能登の未来

FUTURE

百年後に残したい能登の景観、祭り、食

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投稿者

上野佐知子

珠洲市野々江町で、夫婦で理容店を営んでいました。近所の方からいただく野菜や椎茸、山菜など、食卓にはいつも季節の地の物が並んでいました。魚も肉も、安く新鮮なものが手に入ります。二次避難先の金沢で生活し、それまで珠洲で当たり前に食べていたものが、本当に新鮮で美味しかったことに気づかされました。私が今、一番食べたいのは、能登の海藻・カジメの粕汁。茶色のカジメを刻んで粕汁に入れると、鮮やかな緑色に変化します。寒い季節には必ず食べたくなる一椀。この冬はカジメが手に入らなかったので、次の冬には味わいたいです。

百年後に残したいもの――まずは、能登の景観です。能登半島の先端部を周遊する「奥能登絶景海道」は天気が良ければ、海の色が刻々と変化していく様が見られます。冬には波の花が舞います。私は、九十九湾海中公園に佇む宿「百楽荘」でエステの仕事もしていました。窓からはいつも波穏やかな海が見え、お客様から「素敵な景色ですね」と言われていました。エメラルドグリーンの海面に太陽の光が当たると、宝石を散りばめたようにキラキラ輝く。その景色は何度見ても感動し、癒されます。

能登を支えてきたコミュニティである祭りも残したい。珠洲には素晴らしい祭りがたくさんあります。巨大キリコが見られる寺家(じけ)キリコ祭り、豪華な蛸島キリコ祭り、飯田灯篭山まつり、14mものキリコが海中乱舞する宝立七夕キリコ祭り――これらのお祭りを「珠洲大祭」として同じ時期に続けて開催できたら、観光客にも来てもらいやすくなると思います。キリコ祭りでは「よばれ」という祭り料理で客人をもてなす文化があります。料理を作る女性たちは大変ですが、知人や友人が集まり、親睦が深まる大切な場です。

豊かな食も残したい。2021年に、珠洲の郷土料理本『よばれん華』が発行されました。恵まれた海、山、里の地元の食材、受け継がれてきた故郷の味が集められています。奥能登の食文化を途絶えさせないように、この先も私たちの世代が、継承していけたらと思っています。

復興にあたっては、自然はそのままに景観を守りつつ、住人の生活の利便性、住みやすさを確保してほしい。人口減少、高齢化が進む中、コンパクトシティ構想を進めてほしい。分散していた集落がまとまれば、高齢者の孤立を防ぐことができますし、災害に強いまちづくりにもつながります。さらにコミュニティスペースを備えた大きい集合住宅を建てて、いろいろな世代で住めたら、循環型で生活できると思います。畑で野菜を作ってみんなで食べたり、漁師さんから新鮮な魚を買って、お年寄りに料理を教えてもらったりすることもできますよね。
私は珠洲が好きです。ただ、好きという気持ちだけでは、百年後に残すことはできません。この先、ずっと生活できる能登を実現させるためには今後数年間が大切。元に戻ることはできなくても、普通に時を刻んでいきたい。ただそれだけの思いです。

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